マイナー・史跡巡り: 深大寺縁起について -->

土曜日

深大寺縁起について

深大寺にまた行ってきました。 
パワースポットとされる深大寺はその縁起から、恋愛成就の神様でもあります。写真①
秋の落ち着いた雰囲気の中で、いい感じのカップルが多いのもその縁起ゆえでしょう。深大寺の風景等は拙著のブログ(以下のURL)にて一度書いています。 

縁起についても、こちらにもう少し詳しく書いてありますので、ご笑覧いただければ幸いです。

さて、今回は、この深大寺縁起について、更に掘り下げて調べてみました。

1.縁起について

縁起を簡単にお話します。
ここ深大寺には大きな湖がありました。(絵②
②深大寺縁起絵巻
(大きな湖があります)

その湖周辺の豪族のお姫さまに、朝鮮半島からの渡来人が惚れ、恋仲になろうとするところを、姫の両親が反対し、姫を湖の中にある島に隠してしまいます。

そこで渡来人が仏教の水神(深沙大王)に頼むと、霊亀(れいき)が現れ、その渡来人を乗せて姫を救出することに成功します。

両親も根負け、カップル成立。生まれた子供に深大寺を建てさせたというものです。

なので、恋愛成就のお寺として、深大寺は有名な訳です。

2.縁起謎解き①~渡来人と深沙大王~

私が謎に感じたのは、以下3つです。

(1)何故渡来人なのか?

(2)お願いする神様が、何故深沙
   大王という、あまり庶民には
   馴染みの無い神様なのか?

(3)大きな湖は本当にあったのか?

特に(3)は、幾ら深大寺に水が豊富だと言え、島もあるような大きな湖があったという設定にはかなり無理を感じます。
単なる伝説かと思い、色々と調査しましたところ、深大寺より、南側約2kmにある狛江市にヒントを見つけました。(写真③
狛江とは「高麗(こま)の江」つまり、朝鮮の渡来人、高麗(当時、高句麗出身の渡来人を高麗と言った)の人たちが住んでいる江ということで、付いた地名です。(地図④
④6世紀頃の朝鮮半島
脱線しますが神社にある狛犬も、元は神を守る獣として、遠くエジプトの方で、ライオンが設定されていました。

スフインクスは、その代表的な例ですね。それが西から中国を経て、朝鮮は高麗(高句麗)へ渡り、日本に入ってきた時に、日本人が、獅子ではなくて、犬と間違えたのだという説があります。

また、高麗(高句麗)から来たので「高麗犬⇒狛犬」となった訳です。(写真⑤
⑤深大寺にある狛犬
タテガミがありますね

さて、元に戻って、狛江には何故渡来人が多く住んでいたのでしょうか?

おそらく紀元前6世紀後半くらいから、高麗の人が、訪日し、治水技術と仏教を伝えに来たのででしょう。

埼玉県に高麗(こうらい)郡という土地があり、高麗川という川が流れており、ここも同じように高句麗の人が治水に来ていたという伝承があります。

また、仏教については、595年に、高句麗の僧・慧慈(えじ)聖徳太子の師として迎えられています。

深大寺縁起の神頼みということで、深沙大王にお願いするというのは、あまり古来日本人っぽくなく、仏教の香りが強いですよね。普通だったら、せいぜい弁天様にお願いするとか、お地蔵さんにお願いする止まりですが、深沙大王というあたりが、布教的な匂いがします。

⑥沙悟浄
また脱線しますが、ちなみにこの深沙大王とは、孫悟空の中に出てくる沙悟浄のことのようですよ。(絵⑥

沙悟浄が深大寺の祭り神だと思うと、更に親しみが持てますね。

3.縁起謎解き②~大きな湖~

では、(3)の大きな湖はどうでしょう。これも狛江の「江」が関係します。

多摩川です。多摩川は高低差が1953mであり、流路距離138㎞の割に大きいので、暴れ川とされ、何回も流路や川幅を変化させています。

最近では、1974年当時、狛江市で決壊が起き、19棟もの民家が流されました。(写真⑦
また、写真③でも分かる通り、多摩川の南側は、段丘が川に平行に走っており、ここまで流れが来ていました。

更に、地図上、中野島という地名もありますので、ここに島が存在出来るほどの「江」があったと想像出来るのではと考えました。

つまり、お姫様が隠されたとされる島も含む、大きな入り江のような湖に近い地形が、狛江の辺りに展開していたのでは?と想定されるのです。

ちょっと大げさかもしれませんが、写真⑧は、今の多摩川が、段丘まで川幅があったと想定した場合の作図です。(写真⑧
⑧縁起の頃の多摩川想像図
4.おわりに

いかがですか?
ちょっと大胆な仮説でしたが、深大寺縁起が、伝説ではなく、このように狛江市辺りで本当にあったものだとすると、とてもロマンチックに感じませんか?

縁起に出てくる姫と渡来人の二人が見ていた景色が、この狛江の辺りの多摩川に近い風景だとすると、このスポットが味わい深い景色に見えます。(写真⑨
⑨狛江市辺りの多摩川

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


【深大寺深沙大王堂】東京都調布市深大寺元町5-11